理想的ナ恋人ノススメ・裏

フウーと息を吐いたら洋平の上瞼にかかる前髪の房が少し揺れた。邪魔そうなのに、 洋平はそんなことちっとも気にも留めずにオレを見つめている。いつもの冷やかしているときみたいな、 でも半分はマジになっているときの目だ。見つめながら、ゆっくりとオレの太ももに手を置いた。 それだけなのに声が出そうなほどくすぐったくて、体を捩りたくなる。さっきキスしたばっかの唇がてらてら光ってて、その色に心臓がドキドキしっぱなしだ。

洋平の手が太ももを撫でるように上って──なんつーエロい触り方だ!──オレの白い半ズボンのゴムの部分に指をかけた。 オレの心臓が一段と大きく跳ね上がる。そしたら急に息苦しくなって、オレは呼吸を止めていたことに気付き、やっと息を吐く。 洋平の髪がまた揺れた。でも洋平は気にしない。目は俺に向けたまま、半ズボンの内側に指を滑りこませてきた。

オレはどうしたらいいのか分からない。洋平の目と唇を交互に見て自分の心臓の音を聞いて苦しくなって息を吐いて吸う、この繰り返しだ。

なんでこうなったんだっけ、とオレはやっと頭を働かせて思った。本当は覚えているのに、それでもこういうことを考えてしまう。あの時キスしたあとに洋平が全部話して、オレはそれに頷いたのに。

洋平が唇を舐めた。薄く開いたままの唇、あの時キスした唇、さっき喋ったばっかの唇。

なんでこうなったんだっけ──


いつの間にやら春が終わり、梅雨のジメジメした暑さが忍び寄ってくる季節になった。

「今日お前の家に泊まっていい?」

放課後、洋平が突然そう聞いてきた。部室に行こうと席を立ったオレは、ビックリしたまま頷いた。

「えっ、おう、いいけど」

「じゃあ九時頃に行くわ。じゃーな、頑張れよ」

洋平が手を振る。オレは今さら聞き返すこともできなくなって、そのまま急いで教室を出た。

洋平がふらっと家に寄ってくることはあっても、泊まりに来ることは最近とんと減った。 天才バスケットマンであるこのオレは毎日練習で忙しいし、洋平も金稼ぎに精を出しているからだ。つまり、洋平が泊まりに来るのは付き合ってから初めてのことだった。

部活動、自主練習を終えて、馴染みの銭湯で一風呂浴びてアパートに着けばもう時刻は九時前。 部屋で待つと約束通り、原チャリのエンジン音を響かせて洋平がやって来た。

「よう」

鼠色のTシャツに黒いジャージのズボンを穿いた洋平が、敷居を跨いだ。風呂を済ませて前髪が下りていた。 床屋に行きそびれているのか、前髪が目にかかりそうだ。その洋平の手には、泊り用の荷物を詰め込んだバッグと膨らんだビニール袋がぶら下がっていた。

「ほらコレ、店から貰ってきたぜ」

そう言って洋平はビニール袋を差し出した。受け取って中を覗くと、色んな種類のパンやらスナック菓子やらがギュウギュウに入っている。 どれももう時期、古すぎて捨てられる予定だった物だ。洋平はときどき、今のバイト先からこうやって食い物を持ってきてくれる。 店は捨てる手間が省けるし、オレは明日の飯を確保できる。まさにウィン・ウィンの関係ってことだ。

「おー気が利くねぇ。それでこそオレのコイビトだよ洋平クン」

オレはそう言ってビニール袋を洋平に返した。洋平は「ハハ、そりゃどーも」と笑って、台所に行きパンを戸棚の中に仕舞った。

洋平が戻ってきて床にどっかりと腰を下ろした。それから今日のバイト中に出会った変な客の話をして、 オレは面白くて笑ったりした。それでオレも今日の部活動中の天才的な活躍──天才は一挙手一投足が天才的だから、 代わり映えのない練習もじゅうぶんに活躍と言えるのだ──を洋平に話してあげた。

いつもは無礼にも喧しく冷やかしてくる洋平だが、二人きりのときは静かに、まるで自分事みてーに嬉しそうに聞いてくれる。 オレはこのときの洋平が好きだ。落ち着くから。いつもこうでいろよって思うけど、 でもこの洋平はオレといるときだけだって思うとそのほうがすげー嬉しいから、やっぱり今のままでいい。冷やかしてくるのはムカつくけど。

ニコニコしていた洋平が、突然あっと声を出した。

「そうそうそう、今日のバイト中にさぁ、大楠が店の前を歩いてたんだよ。サエコちゃんと一緒にさ!」

「なにぃっ⁉」

オレは思わず飛びついた。

サエコちゃんとは大楠のカノジョだ。大楠はレンアイに現を抜かしていて、口を開けばサエコちゃんサエコちゃんと喧しい。 それなのに、オレたちにサエコさんを紹介しようとはしない。冷やかされるのが目に見えているからだろう。だからオレは、サエコさんの顔を見たことがない。

オレは訊いた。

「どんな感じだっ⁉ サエコさんの見た目はどんな感じだ⁉ カワイイかったか⁉」

オレの問いに洋平は答えた。

「カワイイ寄りかもしれねーな。大人しそーな子だったぜ。まさかあんな子が大楠みてーなバカと付き合うなんてな。とんだ物好きだよ」

「ケケケ、まったくだぜ! そんで洋平、一緒に歩いてたってことは、まさかアイツらデートしてたのか⁉」

洋平は強く頷いた。

「そのまさかだよ、そのまさか! アイツ、サエコちゃんにべったりくっついててさぁ、鼻の下なんかこーんなに伸ばしてやんの!」

洋平が鼻の下を指差して、そのまま首元まで下げた。オレはゲラゲラ笑った。

「ギャハハ! ダッセー!」

「それでオレ、恥かかせてやろうと思って声をかけようとしたんだよ、そしたらアイツら、急に立ち止まってさ……ククク、なぁ花道、アイツら何したと思う?」

オレは早く続きが知りたくて洋平の体を軽くどついた。

「なんだよ! もったいぶってねーで教えろよ!」

どつかれながら洋平は答えた。

「腕組んで、うっとり見つめ合ってさ……そんで顔近づけて、キスしやがったんだよ! 歩道のド真ん中で! アイツらに恥ってもんは無いのかねぇ!」

「ギャー気色ワリー!」

オレは大爆笑して後ろに転げた。そしたら壁にゴンと頭をぶつけた。痛かったけれどそれ以上に面白くて、 オレは頭を押さえながらゲラゲラ笑った。洋平も腹を抱えて笑っていた。大笑いの声が、部屋に反響する。

オレが痛む腹を押さえてなんとか起き上がった時、洋平は笑いすぎて目に涙を浮かべていた。 ヒイヒイと苦しそうに息をしている。目元を拭うと顔を上げてオレを見た。

「この世界にボクたち二人だけ、みてーな顔してやがんだよ。分かるか花道? こんくらいの距離だったんだぜ」

そう言うと洋平はいきなりオレに顔を近づけた。視界いっぱいに洋平の顔がある。鼻と鼻がくっつきそうな近さだ。 上目遣いがちの瞳に照明の光が当たってチラチラ揺れている。瞳の中にいるオレと目が合う。

オレは急に喋れなくなった。さっきまでのバカ話がどっかに吹っ飛んで、何も考えられなくなった。

オレの顔を見ていた洋平の目つきがサッと変わる。黙りこくったまま、薄らと目を伏せて一瞬だけオレの口を見た。 そしてすぐにまたオレの目を見つめた。オレは拒まなかった。そしたら洋平の顔が近づいて、唇が触れた。

ファーストキスじゃない。でもまるで初めてみたいに、胸がドキドキした。洋平の唇は少し硬くてしっとりしていて、もう一回その感触を確かめたくなった。

洋平の顔が離れたけど、でもオレがずっと洋平の唇を見ていたからか、洋平は目を細めてまたキスをしてくれた。 それからも何回かキスをした。触れてはすぐに離れて、また触れてはすぐに離れる。ドキドキで頭がふわふわする、でもなんだか物足りなかった。

そんなすぐに終わるようなヤツじゃなくて、もっと、もっとしっかり洋平の唇に触れていたい。

「花道」

洋平が出し抜けに呼んだ。オレは声が出ない代わりに、目で返事をした。

洋平が続ける。「もうちょっと口開けて」

オレは言われた通り、少し口を開ける。舌を挟めるくらいの隙間だ。

洋平も薄らと口を開けてキスをすると、何かがぬるりと入ってきた。洋平の舌だ。

「ぅあっ」

オレはビックリして、思わずソレを噛みそうになった。

でも洋平は一切気にせず、舌先でオレの舌に触った。オレは反射で舌を動かして逃げた。だけどすぐに洋平の舌が追いかけて、捕まっちまった。

洋平の舌がオレのに絡みつく。ぬるぬる、ざらざらした舌で撫でられて、変な声が出ちまう。

「ふっ……ん、は……あ」

洋平の口が離れた、かと思いきや息を吸ったあとまたすぐに口を重ねた。

洋平の舌が侵入した。オレは待ち構えて、恐る恐る自分の舌を洋平のに絡めてみた。

「ん……」

洋平が声を漏らす。あまりのエロさに、オレはドキッとした。畳の上に置かれたオレの手に、洋平が手を重ねる。 洋平の親指が手の甲から手首へと撫で上がった。くすぐったくて背中に小さな震えが走った。

チュッチュと音が響いて、頭の中がぼうっとぼやける。体も熱くて、のぼせたみたいだ。息が苦しくなってきた。

洋平も同じだったみたいで、おもむろに体が離れた。唇の間を白い糸が引いて、恥ずかしくなった。オレも洋平も、フッフッと息が上がっていた。

呼吸が落ち着いて熱さが少し引くと、股間に妙な窮屈さを感じた。視線を向けると、オレのハーフパンツの真ん中が突っ張っていた。誤魔化しようがないくらいに突き上げている。

オレは焦った。焦ったけど、こうなることは分かっていた。あんなエロいキスをしたら股間がこうなっちまうのは当たり前だ。

そして、コイビトはエロいキスをしたら、そのあとにさらにエロいことをするとオレは知っていた。だってテレビでいっぱい見たから。高宮が持ってきたエロビデオだってそうだった。

それをやっているのは男と女だけだった。男と男だと何をするのかは知らねー。 けど多分、あんまり変わんねーんだと思う。裸になって、布団に入るところは──

裸になって布団に入る⁉ オレと洋平が⁉ どうしよう⁉

顔が熱い。もしかしたら真っ赤になっているかもしれない。洋平にバレたらマズい。冷やかされるに違いない。

チラッと洋平の顔を窺ったらバッチリ目が合っちまった。オレの心臓がドクンと震え、体が固まる。洋平が眉を上げて、口を開いた。

「試してみるか?」

オレは体がバネになったみたいに勢い強く立ち上がった。

「オ、オレの布団そんなにデカくねーぞ!」

洋平はオレを見上げてポカンと口を開けている。かと思ったらブッと噴き出した。

「バカ、そこまではしねーよ」口元を拭い、おかしそうに言う。「そこまではしねーけど、まぁお前にとっちゃ同じようなもんかもな」

オレは洋平の言ってることの意味が分からなくて、目の前が少し傾いた。

洋平がオレの真似をして首を曲げる。すぐに首を戻し、ゆっくりと指差した。差したほうに視線を下ろすと、オレの膨らんだ半ズボンがあった。

「お互いにシコってみようかって言ってんだ。オレはお前のを、お前はオレのをさ」

洋平はまるで何てことないみたいに言う。オレは目を丸くした。

「な、なに言ってやがる!」

「そのまんまの意味だぜ。さっさと抜いてスッキリさせたいだろ? オレもお前もおっ立ててんだからさ」

オレは胡坐をかいている洋平の股間を見た。最初は分からなかったが、よくよく見てみるとソコは不自然に膨らんでいた。オレはさらに顔が赤くなって、しどろもどろに言った。

「でも、そんなこと、できるワケねーだろ! 人に抜いてもらうなんて──」

洋平は信じられないものを見たような顔をした。その顔で、怪しそうにオレに訊ねた。

「恋人が目の前にいるのにトイレで出すってか? おいおい、冗談だろ? それともまさか、やり方知らねーのか?」

「ナメんなよ! センズリこいたことくらいあるわい!」

「じゃあ問題ねーな。いいか花道、抜き合うのは変なことじゃねーぞ。恋人になったんだからな。 世のカップルはそうやって色んなことして愛し合ってんだ。べつに布団に入ってセックスするだけが全部じゃねーんだぞ」

「ふぬぬ……」

股にテントを張ってるくせに、洋平は真面目腐った顔で語った。 オレは洋平の言葉に耳を塞ぎたくなった。愛し合うとか、セックスとか、純情なオレにはまだ刺激が強い言葉ばかりだ。

突っ立ったままのオレを見かねた洋平が足を伸ばし、肩を落とした。

「まぁ、お前がイヤって言うんならやらねーよ。先トイレ使えよ。早く戻ってこいよな」

そう言って洋平は目を閉じた。オレの頭の中では二つの考えが争いを繰り広げていて、そのせいでまだ動くことができなかった。

すると洋平がゆっくりと目を開けた。オレを見上げて、チロッと唇を舐めた。

「……知ってるか花道、人に触ってもらうってさぁ、すっげぇ気持ちいいらしいぞ」

挑発的な眼差しにオレは唾を飲み込んだ。その目つきのまま、洋平はまた口を開いた。

「試してみようぜ」

囁くような声。オレの頭の中では争いはもうすっかり終わっていた。

オレは小さく頷いて、洋平の前に腰を下ろした。


尻を浮かせて半ズボンとパンツを下げてもらい、それから右脚、左脚と順に脚を上げてゆっくりとそれらを脱がせてもらう。 洋平が自分の後ろに雑に置いた。タンクトップが上手いことオレの股間を隠してくれた。それでもまだ恥ずかしくて、オレは膝を立てて脚で前を隠した。

洋平も膝立ちになって手早く穿いていたものを下ろした。パンツに引っかかって下にしなった洋平のチンコが、 ぶるん、と音を立てそうな勢いで出た。バキバキに膨らんだソレは洋平の腹にくっつきそうなくらいに上を向いていた。

オレは洋平のそこから目が離せなくなった。だって今まで、そんな状態になっているソレを見たことがなかったから。 洋平のチンコはトイレでも銭湯でも、何回も見たことがあったけど、こんな状態になってるのは今までで一回も見たことがない。

洋平が座る。脚をオレの両隣に、挟むようにして置いた。洋平のチンコが丸見えだ。 それなのに洋平は恥ずかしそうな素振りを一切見せない。洋平ってもしかしてヘンタイなんじゃねぇかって思った。

オレはガチガチに緊張していた。洋平をヘンタイってことにしないと、こうしてチンコを見せないようにしているオレがビビりってことになっちまう。 それは癪だ。でもやっぱり洋平みたいに脚をおっ広げるのはできそうにない。

「もっとこっちに寄れよ。そんで脚、オレみたいに広げて」

そう思った傍から洋平に言われた。もう逃れられない。オレは緊張を隠して洋平を威圧した。

「うるせぇ、オレに、命令すんな」

「へいへい」

余裕綽々の洋平に腹が立つ。オレは決心して、脚を広げて洋平の両隣にぶっきらぼうに置いた。

尻を動かせて洋平に近寄ると、キスした時と同じくらいの距離になった。チンコが今にもくっつきそうなほどに近い。

ギンギンのチンコが向かい合っている。当たり前だが、オレのほうがデカい。男としての矜持が満たされ、オレの緊張が少し和らいだ。

オレは言った。

「他人のチンコ触るとかよォ……」

「この期に及んで何を今更……それともなんだ、リードするだとかなんだとか、アレはホラ吹いたってのか?」

「ンなワケねーだろ!」

オレは咄嗟に否定した。

そーだオレたちは付き合ってんだ。コイビトのチンコの一本や二本触れねーでどーすんだ。 どんなにエロいことでも、クールにリードするのが理想的なコイビトの姿なのだ。オレはすっかり大事なことを忘れていた。

オレは頭をブンブンと横に振って、気を取り直した。さっきまでの緊張が消える。一瞬にしてスイッチが切り替わる、そこが天才の凄いところ。

「触るぞ」

オレは力強く言った。洋平がフッと微笑んで頷いた。

ほぼ同時に、お互いのチンコを握る。洋平の手がオレのに触れて、ちょっと動かしただけなのに、 震えにも似た快感が走ってオレは堪らず声を漏らした。

「ハッ、あ、うわ、ヤベェ……」

気持ちよさに手に力が入る。すると洋平の口から尻尾を踏まれた犬みたいな声が出た。

「イデデッ、イテェよ花道、もっと力抜けって!」

ぐしゃっと歪んだ顔で洋平が言う。オレは慌てて手の力を緩めた。

「す、スマン」

痛めた箇所を撫でるように擦った。そしたら洋平は打って変わって気持ちよさそうに口を開けた。

「あっ……、そう、そんな感じ……、すげぇ気持ちい」

目をとろんとさせて言う洋平に、オレは何とも言えないゾクゾクした感じを胸の奥で抱いた。

お返しと言わんばかりに、洋平もオレのを擦る。竿を扱いて、ときどき親指の腹でチンコの先っぽを押すように擦られて、オレはあまりの気持ちよさに腰がビクビクした。

「んあっ、ようへっ、それヤベェっ、ヤベェって」

でも洋平は止めない。オレの手も勝手に動いてるみたいに、洋平のを扱き続けている。

洋平の言った通りだった。人にシコってもらうのはすごく気持ちが良かった。というか、「上手い」って思った。 オレがいつもやってるやり方と違う気がする。こんなふうにこねくり回すみたいに擦ったり、 先っぽを弄るなんてしたことなかったし、そんなやり方があるなんて知らなかった。

オレはずっと同じやり方で扱き続けている。馬鹿の一つ覚えみたいに、ただ手を上下に素早く動かしている。 でも洋平はすごく気持ちよさそうで、眉を寄せて半開きの口からエロい吐息と声を出していた。

二人の声と、ヌチュヌチュっていうエロい音が狭い部屋に響く。他の人に聞こえたらどうしようって不安を抱く余裕もないくらい、必死に快楽を追っていた。

金玉から何かがせり上がって、チンコの中を通っていくの感じる。我慢汁がチンコの先からトロトロ溢れて、 もう限界を迎えようとしている。洋平も同じみたいで、オレの手の中で洋平のチンコがビクビクと痙攣した。 早くイキたくてさらに手の動きを加速させる。オレの口から上擦った声が出た。

「あ、出る、出る、う」

「あーオレも出そうっ……」

オレは目をギュッと瞑った。瞬間、腰を走る快感で体が震えた。洋平のもビクンッと大きく痙攣したのを感じた。

「あっ、ああ──」

オレは洋平の肩に頭を凭れかけた。はふはふと熱い吐息が洋平の肩にぶつかる。スウッと引いていく熱でオレは冷静になって顔を戻した。

この出したあとの感覚は好きじゃない。なんていうか、あんなに気持ちよくて最高だったのに、 あっという間にクソつまんなくなって台無しになる。残るのはダルいって感情だけで、余韻なんてちっともない。

もっと、体の中まで気持ちよくて、ずっとそれが続くような、気持ちよさに包まれているみたいな感覚になりたいけど、きっと無理なんだろうなって思った。

手の中に放たれた感覚がなくて、オレは焦った。けれど、イク寸前に洋平がティッシュを用意してくれたみたいで、吐き出されたソレは全部ティッシュが受け止めていた。

洋平がティッシュをもう一枚手に取って拭く。オレも真似するように濡れた手を拭いて、ゴミ箱に捨てた。

青臭いような、イカを切ったときみたいな臭いが漂う。洋平が立ち上がって、オレの隣に立ち窓を開けた。網戸をすり抜けて、生温い風が部屋に入ってくる。

洋平が欠伸をした。そして自分のパンツを掴むと、気怠そうに穿き始めた。

「あー気持ちよかった。眠いしもう寝るか」

「は?」

オレは思わず声を出した。洋平が不思議そうに聞き返す。オレは慌てて「いや、なんでもねぇ……」と首を横に振った。 洋平が何か言いたげにオレを見ている。オレはサッと目を逸らした。

たった一回でやめるのか? オレはまだ全然物足りない。あと一回は出さねーとスッキリしねぇ。 オレはいつも二回くらい抜いている。それでも足りない時だってある。どれだけ激しく運動しても、 エロいことしたいって欲求は全然消えねぇ。それとこれは別だから。

でも他の奴らはそうじゃなくて、たったの一回だけで満足するのか? それじゃまるでオレだけドスケベみてーじゃねーか!

オレの頭の中にはまださっきの洋平がいる。エロい顔してオレのを触っている洋平が。手には洋平のを握ったときの感覚も残っている。

またオレの股間が熱くなる。まだパンツを穿いていないソコはすぐに洋平にバレちまうだろう。上手いこと誤魔化してトイレに行かないとマズい。いろんな意味で。

オレがゆっくりと立ち上がろうとした時、ふいに洋平が声をかけた。

「花道、お前まだいけるか」

オレは胸が高鳴った。同時に安心もした。やっぱり洋平も足りねーんじゃねーか。

オレは恥じらいつつも、期待を込めて答えた。

「おう」

オレの返事を認めた洋平が、オレの前に腰を下ろす。でもパンツを脱ごうとはしないから、オレは不思議に思った。

そのまま洋平が体を伏せて、オレのタンクトップを捲り上げた。オレはワケが分からずポカンと見ていた。

すると洋平は甘く立ち上がっているオレのチンコに手を添えて、チュッと先っぽに唇を当てた。

「おいっ、何やってんだよ⁉」

オレは咄嗟に声を荒げた。

「心配すんな噛みつきゃしねーよ」

洋平は平然として言った。そしてまた唇をチンコの先っぽにつけて、ペロペロと舐めだした。

「ひゃっ」

オレの口から情けねぇ声が出る。温かい舌が先っぽを撫でる。

「やめろよンなとこ、キタねーだろっ」

気持ちよくて我を忘れそうだけど、オレはギリギリのところで耐えて洋平に声をかけた。

洋平が眉を顰める。

「なんだよちゃんと洗ってねーのか? 勘弁してくれよな」

「洗ってらァ! そーいうコトじゃなくて、うあっ……」

言い終わる前に洋平が先っぽを口に入れた。

熱い。それが最初に感じたことだった。熱くてチンコが溶けちまいそうだ。 フニャフニャにとろけそうだけど、その逆でオレのチンコは洋平の口の中でガッチガチに硬くなった。

気持ちよさにオレの脚が勝手に閉じようとする。でも洋平の腕がオレの脚をぐるりと回って太ももを掴んでいるから、閉じようにも閉じられなかった。

洋平の舌が竿の根元から裏筋、先っぽへと這い上がる。

「あぁっ、ふああ、よおへえっ」

今まで出したことのない鼻にかかった声が出る。恥ずかしいけど止めようがないくらい、 物凄い快感がオレを襲っている。体を捩ると土壁に体がぶつかり、ザラザラとタンクトップが擦れる音がした。

舌先が先っぽをチロチロと舐めて、オレは子犬みたいにクゥクゥ鼻を鳴らした。足の指をグニグニ動かしてなんとか快楽に耐えている。

洋平が舌先でオレのチンコを弄ぶ。かと思ったら今度は奥深くまで咥えだした。

「ふっ、んぐっ……」

洋平の顔が苦しそうに少し歪む。そのままゆっくりと頭を動かして、口でオレのを扱きだした。

「うわあっ、ようへっ、それヤベェっ」

オレは目を強く瞑って洋平の頭を掴んだ。

「ヤベェからっ、やめろってばぁ」

そう言ってオレは洋平の頭を掴んでいるけど、でも離そうとはしない。むしろ手は洋平の頭を固定していた。 腰が勝手にヘコヘコと動く。洋平の熱い口の中、ザラザラぐにぐにの舌と硬い上顎にチンコを擦りつけている。

「フーッ、ンフーッ」洋平は鼻息荒く、ヂュルヂュルとオレのを吸っている。喉がキュっと締まって、オレのチンコは洋平の口の中でミッチリと圧迫されていた。

「バカよぉへっ、マジで、出るから、ヤバいって」

言葉に反して腰はヘコヘコ、ヘコヘコと動き続ける。もう限界ギリギリだ。このままだと洋平の口の中でイっちまう。

洋平が口に入れながら喋った。聞き取りづらいけど、「出せばいいだろ」的なことを言っていたと思う。 喋りに合わせて口内の締まりが変わり、オレの腰が勝手にびくびく動いちまう。

「喋んなっ、あっ、出る、でるでるっ、うぅ──」

オレは頭をフルフルと横に振りながら、洋平の口の中に射精した。

「ア、あー……うあー……」

カクカクと腰が動く。洋平はまだゆるゆると口で扱いて、チンコの中に残ってた精液を搾り取った。

全部出し終えて、オレの痙攣は収まる。この快感も、やっぱりすぐに消えていく。疲れと眠気がグッとオレの肩にのしかかってきた。

ようやく洋平が口を離した。ティッシュを一枚広げると、口を開けてそこに精液を吐きだした。白く濁った汁が糸を引いて洋平の赤い舌の上を流れる。

「ウゲェ、まっじィ……」

顰め面で洋平が言う。オレは壁に凭れて、ぼんやりとその様子を見ていた。

そしてオレはズルズルと壁に擦れながら、ぐったりと横たわった。視界にはシミだらけの天井が映る。照明の白が目に眩しい。

「起きろよ花道。チンポ丸出しで寝るんじゃねーぞ」

視界の外で、洋平がオレを呼んでいる。でもオレは体を動かせられない。もう頭が働かない。 今日は色んな初体験があって、それで振り回され過ぎて、オレはすっかり疲れちまった。洋平はまだオレを呼んでいる。

オレは果たして洋平をクールにリードする、理想的なコイビトになれるんだろうか……。

洋平の声を聞きながら、オレは目の前に聳える壁を見つめていた。